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新年、核拡デザインのすすめ

2016 / 1 / 6

2016年の新年、明けましておめでとうございます。
今年も平和な日和のおだやかな新年が言祝(ことほげ)ています。
ありがたいことです。

思えば「核拡(かくかく)デザイン」を掲げ続けて、間もなく桜の季節がやって来ますとPAOSも設立48年、個人事務所のアップデザイン時代から指折り数えますと、丁度創業50周年を迎えることになります。
当然のことながら、永き挑戦の日々は、振り返れば波風の多い歳月の連続でしたが、ようやく、世の中のデザイン分野への認識も核拡デザインと呼ぶにふさわしい時代の曙光が見えつつあるように思えます。
「核拡デザイン」は私が仕事人生の過半をかけて使い続けてきた表現であり生業ですので、過去に講演や講義を聴かれた方、また拙文に接せられた方々は既にご存知のことかと思いますが、基本的に私はこの理念や方針を貫き、デザインの影響領域や活用範囲を少しでも広く深く位置づけようと努力を重ねて来たと考えています。ですからこれからもこうした発想や理念については、重ねて探求を続けていくつもりです。

「核拡デザイン理念」については、学生時代の最初の発想から指折り数えますと五十年余になります。
元々はデザイナーになろうと桑沢デザイン研究所で学んでいたある日の気づきで、「世の中にあるデザインを存在させた最終的意思決定者は、企業の経営者や行政の長であり、デザイナーは絵を描いたり原型モデルを作っているだけではないか?」と思い始めたのです。そしてこの疑問への解決策、つまりトップマネジメントの人たちに理解され採用されるデザイン理論や手法の開発も、デザインの重要な仕事と思い立ち、その研究のための時間が欲しいと求めて進んだのが、早稲田大学でした。
そこで精力的に活動をした結果が、全学部の学生500人以上が参加してくれたデザイン研究会で、その活動の延長で出来上がっていったのが今のPAOSグループです。振り返ってみますに、結果的にPAOSの仕事事例の原型は、早稲田大学という、良い意味での雑居大学に端を発していたのだと思えます。

その後の世の中の流れも、重要なのはCI(コーポレート・アイデンティティ)だとか、やれ次はブランド戦略だとか言われながら今日に至っていますが、そうした広く深くのデザイン思考のお陰か、たとえば中国最大のサイト百度(バイドゥ)で中西元男と検索すると「アジア(最近では東半球?)CIの父」等と記されており、さすが「李白は一斗詩百編」等、何ごとにも大袈裟な表現が得意な国らしい称し方です。しかし、呼称の問題は苦笑以外の何物でもなく、重要なのは中身やその成果です。そして外してはならないデザインの核心は、すぐれた文化を広く世の中に生み出していくということではないでしょうか?これぞ「デザインの使命」と考えてきました。
当然、デザインという受注産業の多くは、企業等の依頼があって成り立つビジネスですから、当該クライアントのために役立つことが何より重要です。言い換えれば、生産機関・経済機関としての成果を残すという要求に応えることが大切であるのに加え、広い意味での文化機関としての機能をクライアントが果たしてくれることを、PAOSでは常に重視しています。そうした発想から、これまでご依頼を受けるプロジェクトでは、所謂、表現のデザインだけでなく、企業理念や事業指針の提案まで、総じて見えないデザイン・見えるデザイン共々に提案させて頂きました。
それが結果的に「デザインという切り札を持った経営コンサルタント」としての実績を積み上げてくれたと感謝していると同時に、PAOSのような事業分野を専門とする人たちが、もっと多く出てきてもよいのではないかと考えています。
それがSTRAMD(ストラムド/戦略経営デザイン人材育成)という講座を始めた所以でもあります。

そもそもデザインという分野は、産業革命と共に生まれたとも言われますが、確かに、1851年の第1回ロンドン万国博の頃、当時の爛熟したヴィクトリアン調の過剰装飾に異を唱えた、J.ラスキンやW.モリスらが「西洋の優れた時代には必ず歴史を彩る文化があった。それは、ギリシャであり、中世であり、ルネサンスであった」とするところから、アーツ&クラフツ ムーブメントが起こり、それが今日に続くデザイン史の始まりになったと言われます。しかしここでの成果が、逆に今となってはデザイン教育を美術教育の範疇にのみ留めてしまう、という弊を招いたと私は考えています。

先般、韓国の著名なデザイン教育機関:弘益大学が、入学試験から実技を外し、知的に優秀な学生を入学させることを優先させると聞かされ、驚きました。実技は4年間の大学教育期間の中で何とか養えるから、と。確かにこれからはデザイン分野においても、企業や自治体のトップマネジメントとの会話が成り立つ人材が必要とされる時代がやってきたようです。いつまでもデザイナー村の狭隘な社会の中で叫んだり議論し合ったりしていては、デザインの持つ可能性の広がりの芽を摘んでしまうのではないでしょうか。
特に、メガチェンジ(大変革)の時代と呼ばれる今日、言い換えれば、成長の時代から成熟の時代への転換期に当たって、デザインという職業や教育はもう一度根本的に見直されるべきだと考えています。
これはデザインというプロフェッションそのものの見直しであり、同時に、デザインが諸分野の垣根を越えてインフラストラクチャー化していく時代を迎えた証しでしょう。



産業や組織構造の流れは、上図でシンボライズして示しましたごとく、工業化時代、情報化時代、網策(もうさく)化時代と世の中が進むに従い、企業の組織なども理路整然と解が出せる時代、多数決で物事が決められる時代では無くなりつつあります。
しかし、理路不全だからといって無価値なのかというと決してそういうわけでもなく、むしろ思いもしないような素晴らしいアウトプットをもたらしてくれたりもします。しかも、それはかたまりとしての群市民へのソリューションではなく、まさに個々人に対する最適解として具現化されようとしているのが、「AI(人工知能)時代 」と呼ばれる現代です。ロボティクスを産業や社会に導入していく時代のデザインとは果たしてどうあるべきか?そうした課題を、現代のわが国のデザイン界は突きつけられていると思います。

上図のラビリンス(迷宮)のようなオープンアクセスとしての網策化、俗っぽく言うとタコ足配線化は、必要な時に必要な物同士が最適に結び合うことが可能な状況を示しています。つまり、今日のAI化の進捗によって、個々人のいろいろな問いかけや要求に対し、「あなた一人だけのための解」が出せる時代にもなりつつあるのです。
諸分野での解の出し方も、こうしたアナログとデジタルを横断するソリューションを生み出せる状況を、どのように捉え活かしていくべきか?まさに興味深い迷宮化が始まろうとしています。デザインとても例外ではありません。
私はこのような課題に脈絡を与えることが、自身にとって今年1年の最大のテーマとなろうかと考えています。

新年早々またまた固い拙文をものしてしまいましたが、
本年もよろしくお付き合いの程お願い申し上げます。

2016年正月



投稿者 Nakanishi : 2016年01月06日 11:09