中西元男 実験人生
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どうして今頃「Design Thinking元年」なの?

2014 / 8 /18

最近、どうも摩訶不思議な現象が生まれております。
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上記のようなセミナーの案内が届いたり、雑誌の近刊でも、今年(2014年)は「Design Thinking(デザイン思考)元年」と書かれています。
加えて、最近では「デザイン思考家」なる専門家まで存在するとか・・・。

次から次へとキーワードを生み出したり操ったりしてブームを生み出すのはマスコミの常ですし、「今しか考えない日本人」と言われる私たちにとって、デザインや経営の世界で、「CI」「ブランド戦略」についで、そろそろ次なる流行語というか、流行現象が求められられている時期なのでしょう。
リーマンショックから抜け出すため、無理矢理にでも、Design Thinkingを企業活動や自治体活動に結びつけて大騒ぎをしないと収まりがつかないのでしょうか。

「貴方に教えてもらって良かったのは、デザインによる色・形といった表現面での改革ではなく、むしろ、企業におけるものの考え方や戦略レベルでのデザインでしたね」とは、経営不振で倒産の危機にあった松屋銀座の経営を建て直し、3年近く対前年同月比2ケタ成長を遂げ、今でもミスター百貨店と呼ばれている山中竢シ屋社長(当時)の対談時のことばです。
1989年、つまり今から25年も前のご発言で、これは明確に記録映像として手許に残されています。残念ながら山中さんは鬼籍に入られてしまっていますが、もし生きておられたら、現在のデザイン思考元年などの騒ぎに何という言葉で応えられたでしょう。

在りし日の山中竢シ屋社長

今を遡ること半世紀前、さまざまな事象のデザインを世の中に実在させている本当の意思決定者は決してデザイナーではなく、それは多くの場合、組織体の長というか、もっと言うなら企業の経営者自身ではないかと私が気づいたのは、1959年のことです。
その頃私はデザイナーを目指す一学生でしたが、社会や生活の中に、本当に良いデザインを存在させていくためには、優れたデザイナーを育てることも重要だが、それ以上に、経営者に理解されるデザイン理論や採用されるデザイン手法を開発していくことも同時に重要事と考え始めました。今と同じような夏休みの暑い時期でした。
でも「これぞ“Design Thinking”の核心です。」

その具現化のために、総合大学(早稲田)に入学し直し、そこでのデザイン研究サークルの研究活動を活発化し、やがてその延長上に後輩達と共に生み出したのが現在のPAOSという会社です。スタートは1966年のことです。
PAOSの最も大きな特長は、「Design Thinking」を、プロダクツ等商品のデザインレベルにとどめるのではなく、企業の存立理念や事業方針の構築にまで高めていったところにあります。
・ ブリヂストンを世界一のタイヤメーカーに押し上げるための戦略立案
・ 伊藤忠が地球企業として存立していくための理念づくり
・ 伊奈製陶からINAXへの社名ブランド変革を伴う7つのCI戦略
・ 東レからTORAYへ素材産業作興のための理念再構築イノベーション
・ セキスイハイムのユニット工法住宅事業化成功のための4種の神器作成
http://www.paos.net
挙げればまだまだきりなくありますが、これらは全て「Design Thinking」に基づいた、ソフト&ハードのデザインを主軸とする成果です。

このように、プロダクトレベルではなく、企業経営レベルから「Design Thinking」を入れていく開発事例は、PAOSのプロジェクトにおいては40年以上も前から枚挙にいとまがありません。それなのにどうして今頃元年なのでしょう?
・ スタンフォード大学がMBAでd-schoolを始めたから?
・ 東京大学も工学部の大学院を中心にi-schoolを始めたから?
・ ドラッカースクールも今後の経営はDesign Thinkingと主張するから?

でも、ハーバード大学とスタンフォード大学のビジネススクールが、その教科書にPAOSをケーススタディとして取り上げてくれたのが1997年のことでしたから、今のデザイン思考ブームよりは相当前の話ですし、執筆担当のT.Kosnik教授の内容理解レベルは、現今のデザイン思考論議よりずっと高かったと思います。

市場経済第一主義が崩れ去る以前から、企業が新しいデザイン思考を伴って文化機関や社会機関としても使命をも果たしていくのが至極当然のことと、私は考えてきましたし、そうした成果を伴って企業経営を良くしていく実証事例は、PAOSには山のようにアーカイビングされています。その多くはわが国を代表する企業の事例ですし、これらは産業史的に見ても重要な資料・情報と考えられようかと思えます。(詳しくは拙著「コーポレート・アイデンティティ戦略(誠文堂新光社刊)」をご覧下さい)

ゆえに何故今頃Design Thinking「元年」なのか全く理解に苦しむのです。



投稿者 Nakanishi : 2014年08月18日 10:23