中西元男 実験人生
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COMMENT

« PAOS設立45周年にあたり
5/5 「記録のPAOS」
メイン「Gマーク」、15年前民営化時に考えたこと »

「どこを見ているのだ?」Gマーク審査員は

2013 / 10 / 4

この度「2013年度Gマーク」を受賞いたしました。
それ自体は有難いことなのですが、受賞理由の公開コメントに「時代の変容とともにデザイナーに求められる力も変化している。(中略)、その新規性と独自性を高く評価した」と述べられていました。

私たちは、STRAMD(戦略経営デザイン人材育成)というテーマで応募したのですが、この内容と本質は「今後は、デザイナーの強化だけでは、デザイン界の発展やデザインビジネスの広がりは難しい」との主張で実験教育STRAMD3年間の成果を背景に、数多くの記録や裏付けを伴って根本的なデザイン教育の見直しを提示したつもりです。
要は「これからは美術学校系のデザイナーの強化や教育だけでは、デザイン界の発展も、デザインビジネスの広がりも期待し得ない。新しい《デザイニストの育成》こそ肝要」というのが応募趣意なのです。



ところが審査結果の公開コメントで拝見する限り、要は、担当された審査員の皆さんは、応募主旨を理解されていないのか、理解する力量が無かったのか、まるで現況のデザイン業界の問題点を把握していないことを自ら露呈し証明したような評価を寄せておられるということです。実に貧しい悲しい話です。
察するに、多分、ろくすっぽ応募内容・提案主旨や資料も見ないで、単なるデザイン界の現況に対する低い知識レベルで、表層的な印象審査をなさった結果なのでしょう。
その意味では、今回の審査結果は明らかなる誤審と言えます。

STRAMDという、デザイン界を根本的にイノベートしていこうとの講座の主旨は、簡単に言うと、「デザインビジネスの隆盛を図るには、従来型のデザイナーだけを育て強化しても無理、むしろデザイナーを活かせる人材(デザイニスト)やその方法・環境を育てることが肝要」ということであり、事実STRAMDには経営者・MBA・大学教授・管理栄養士・薬剤師・一級建築士・弁理士・WebやIT関係者等々、実に多彩な人材が講座を受けに来られています。

いずれも今後の自らのビジネスにとって、今こそデザインを識り活かすことが重要、との認識の持ち主たちです。


受講生の構成

今やデザインは美術教育の延長上の作家作品主義的な教育体系に留め置くだけでは駄目で、現に昨今はデザイナーの単なる下請け化、部材屋化、部品化の時代が始まっており、ベテランデザイナーの転業や廃業等も散見され、完全に作家的能力だけではデザインビジネスそのものに無理が生じ始めているのです。一部の営業的才能に恵まれた人材は別ですが、それも多くは個人的なデザインアートであって、企業経営レベルからの組織的なデザインビジネス(産業)を展開されている事例は稀有と言えるでしょう。


デザイン教育の4象限

川崎和男さんが最近のFB(フェイスブック)で、『最近のデザインコンペを傍観しているが、(中略)、審査基準も大間違い、ゆえに、受賞作が国際革新の主導先導には絶対にならない。』
と述べておられます。
私もこの意見にはもろ手を挙げて賛成です。

STRAMDは、もともと私の経営してきた会社であるPAOSの経験・実績・資料・ノウハウ等を中核に開講した講座です。お陰さまで、昔からそうですが、PAOSは今も特に営業担当者を置いたことも営業活動をやったこともないのですが、仕事が溢れています。次から次へと新規のプロジェクト依頼や問い合わせが絶えません。もちろん小所帯の微力事務所ゆえ、やむなくお断せざるを得ないことも多くなっておりますが、要は理念・戦略・方針のデザインから始め、形や表現・コミュニケーション、そして事業創造や新企業文化の構築を一気通貫でデザインしていく仕事が、世の中から大変多く求められているという事実が存在しているということです。それを組織的に行いうる人材育成やビジネスモデルが、デザイン界のメガチェンジにとっては喫緊(きっきん)の課題であるのだと思います。
どうしてこれらの要求が、デザイナービジネスとは結びついていないのでしょうか?
それは、多くは現状デザイン教育の遅れの問題であり、経営学系の世界に革新的な「目の人」が出て来ていないことも一因ですが、デザインビジネス界にもリーダーやイニシエーターが存在していないという問題でしょう。

PAOSでは、電電公社からNTTへの民営化や日本バレーボール協会のVIなど、どうしても勝ち取ってやろうと考えた僅かのプロジェクト以外、ほとんどデザインコンペへの参加はお断りしています。
川崎さんも指摘されていますが、それは概ね応募する側より審査員のレベルの方が低いからです。
今回は、はしなくもGマークでそうした問題が起きてしまったのだと思います。

今、世界のデザイン界ではDesignよりは「Design Thinking(デザイン思考)」に注目が集まっています。
スタンフォード大学d-schoolを筆頭に、東京大学も工学部大学院にデザイン思考を核とするi-schoolを設け、慶応大学や経営の世界では有名なドラッカースクールまで「これからの経営はデザイン・シンキングだ」と言い始めております。要は、MBAやMOTとデザインを結びつけることが新しい経営ソリューションにとって重要事との認識ですが、内容を散見するにカリキュラムのほとんどは経営的見地から新しいプロダクトのデザインをテーマに組み入れ、その波及成果を思考や体質の改善に繋げて、新しいビジネスモデルの創出を目指そうとの意図と見受けられます。

ただPAOSでは、ここ半世紀近くにもわたり、プロダクツレベルというよりは企業存立や経営理念の根幹からデザイン思考を取り入れ、数々の実績を築いてきました。その実態はホームページやこれまでの多くの著作を参考にしていただければと思います。

そもそも、私がデザイン教育革新の重要性に目覚め始め行動を起こしたのは1959年の事ですから、今から半世紀以上も前のことであり、その歩みには確固たる信念があります。
資源も無いわが国の今日あるは、寺子屋時代の前史に加え、明治以降世界的に見ても稀な教育プログラム遂行のお陰ではなかったのでしょうか?
台湾や中国が目下国を上げてデザイン人材の育成に努めている現況を、審査員の皆さんはどう見ておられるのでしょうか?
産業や国家の発展の根本が教育にあること、新しい分野の人材育成にあることが分からないということは、まさかあるまいと思います。世界のどこにSTRAMDに比肩できるデザイン教育プログラムがあるというのでしょうか、そのことを具体的な例を挙げて示していただきたいと思います。
私は、東京芸術大学や武蔵野美術大学、桑沢デザイン研究所等々で教壇に立ってきましたが、それ以上に経営学部系の大学や教育機関で、特に力を入れてデザインの効用や理解促進に取り組んできたつもりです。上智大学経営学科で5年、立命館大学経営学部と大学院で3年、早稻田大学ビジネススクール他で4年、アーク都市塾で4年、いずれも経営学系の人たちにデザインの重要性と有効性につき教え説き続けてきました。
STRAMD教育は、こうした豊富な経験とPAOSの100社余のケーススタディをベースにしていますから、今のところ、世界最先端の企業における開発事例や実績を伴ったデザイン教育プログラムであると自負しております。

加えて、そうした成果やPAOSでの業績が認められ、かつてハーバード大学とスタンフォード大学のビジネススクールが協同でつくるMBAの教科書にも採り上げられてきました。スタンフォード大学に現行のd-schoolが誕生する10年も前のことです。
その際の評価理由は、「企業の身体や心(精神)を治すケーススタディは沢山見てこれまでにも多く採り上げてきたが、企業の経営環境に感動(Emotion)を与え不振企業を蘇らせたり、業績向上に寄与したコンサルティング事例は世界でも初めて」というものでした。


ハーバード大学MBAの教科書

そうした積み重ねの上に創り出された集大成が、まさに“STRAMD”です。

そしてそれがGマークを受賞したとはいえ、何故その他大勢レベルの評価しか受けられないのか?しかもなぜそれが提案内容とは異なった誤解に基づいての評価なのか?これでは、審査員の目はフシ穴ではないのか、との疑念を抱かれて当然ではないでしょうか。
この世界稀有のデザイン教育プログラムが、部門賞候補はおろか、ベスト100にも入っていないとは、一体どういうことか?と私は自らも深く改革に関わったGマーク制度の堕落を案じています。
今からでも、可能ならばその論拠や審査理由を、多くの皆さんの前に明らかにしていただきたいと考えております。これまで私が教壇で接した生徒の皆さんの数はおそらく数千人といえるでしょうから。

Gマークの審査員の方々は、残念ながら先端のビジネス現場や各国のデザイン政策事情の知識や理解力をお持ちではなかったのでしょう。
その意味で、今回の応募は私どもが審査員の実力やレベルを審査させていただいたという点で、実に面白い結果になったのだとも考えております。

皮肉なことに、川崎和男さんは民営化後第2回目の審査委員長であり、私はGマークの民営化改革や経営立て直しの制度改革等を図った第1回目の審査委員長です。


Gマーク大賞の公開審査風景

せっかくの機会ですから、次回の私のブログにおいては、15年前のGマーク民営化時に考えたことや、諸提案の内容や背景につき、その事実を記録として残しておくことも無駄では無かろうと考えております。

今回応募しました部門は、元々は私が審査委員長時代に「新領域部門」と名付け設けた民営化後の新規部門で、デザインをわが国の文化インフラに育てていくため、色・形といった見えるデザインのみではなく、「見えないデザイン」もこれからは重要な表彰対象にして行こうとの意図のもと新設した部門です。
民営化時にあたって、それまでGマークに協力的であった大企業40社のデザイン担当役員や部長の皆さんに東京・大阪で3度にわたりヒアリングを行った際、それこそ出るわ出るわの審査員批判があり、それに少しでも応えたいと考えた結果の措置の一つであったのですが、以来15年、視野狭窄としか思えない審査実態や審査レベルの低さが露呈している現実は、看過できないとの意図のもと、今回は私の敢えての献文です。
目下、この分野ではわが国が最も進んでおり、海外からは「New PAOS Design」なる新書籍を著して欲しいとの要望が出ています。こうした私どもの「拡デザイン発想」や行動の真意が、審査員の方々に伝わっていないのは真に残念至極です。

もともと私は自身が深く関わったGマーク制度には、どちらかというとシンパとして好意的に関わってきたつもりですが、今般の審査の低レベルや甘えの構造には、実に許せない事態としか言いようがありません。



投稿者 Nakanishi : 2013年10月04日 10:31