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チョコレート奇譚(きたん)

2012 / 2 / 7

ヴァレンタインデーがやって来ると思い起こすチョコレートにまつわる話があります。
それはプロジェクトの内容としては素晴らしかったのですが、文化的には悲しい、同時に業界的には貧しいお話です。


チョコレート(新開発商品)の1種、26年前だが今見ても新しい。

1986年、当時のクライアントであったユーハイムから、新規にチョコレート事業を起ち上げたいとのご依頼がありました。
「美味しいものは身体に良い」とは、ユーハイム社の創業時からの社訓のようなものでしたが、事実、同社の河本武社長(当時)は、頑(かたく)なにその創業者からの教えを実践されていた方でした。ですから、チョコレート事業を立ち上げるに当たっても、スイスの高級チョコレートを原料として輸入するところから始めるという方針でした。
当時のわが国チョコレート市場は、年間売上の半分はヴァレンタインデーに集中するといった、実に片寄った状況にありました。

そこでPAOSは、駄菓子屋的な大量生産を前提とした当時のわが国菓子業界の大勢に従うのではなく、チョコレートを大人用の洒落たパーソナル・ギフトアイテムとして位置付け、ヴァレンタインデーなどに特に関係なく、日常の贈り物用になる楽しくオシャレな高級チョコレートを生み出し、古い業界に新しいくさびを打ち込もうとの方針提案を行いました。
河本社長もこの考え方に大いに賛成してくださり、次々と新商品の提案をさせていただきました。

ブランド名もイマージュドール(黄金のイメージ)と名付け、それまでの業界の常識を破る新商品が次々と生まれていきました。そして、原宿には専門店としてのシンボルショップまで設けられ、好評裏に新事業はスタートしていったのでした。
それが、ご覧のような品揃えでした。四半世紀も前の話ですが、今売られていても十分に新しいと思いませんか?


090911_w.jpg

開発された新ブランドとパーソナルギフト用の数々の品揃え例

ところが、この事業は突然中止の憂き目を見ることになります。
なんと「商品自体がパッケージ全体の70%を越えていなければならない」とする食品業界の約束事に違反している、とのことで、かなりの商品が生産中止に追い込まれたのです。
他にも理由はあったかもしれませんが、当時はお上や護送船団方式の業界のルールに違反など出来る時代ではありません。

私は、食は1.エサ、2.標準食、3.文化、の3種に大別できると考えてきました。
1. 「エサ」は、文字通り空腹を満たすためが目的の食です。
2. 「標準食」は、家庭料理や給食など、日常生活を支えるための食です。
3. 「文化」は、懐石料理など、いわゆる“文化としての食”です。

これは、洋菓子業界だけの問題ではありませんが、どうもわが国産業界は、全般的に見て、この文化や生活の成熟を勘案してのマーケティングで遅れをとってきたのだと私には思えます。
大量安価生産という錦の御旗というか、いわゆる工業化時代からの通念や呪縛から抜け出られず、結果、受け手の心情や文化の価値を認めない商品開発の風潮が、企業に国際間競争や地域市場特化への対応力を失わせていったのだと思えてなりません。

ユーハイムのチョコレート事業の消滅は、そうした代表例のように思えます。

最近はヨーロッパから大量のチョコレートが贈り物用に輸入されてきています。


最近のヨーロッパ輸入チョコレート類の一例

それらを見るにつけても、もしイマージュドールを時代の新しい価値として認め、業界全体が新しい市場開発競争、つまりチョコレート市場の競争共栄時代に入っていれば、今頃わが国のチョコレート事業は、中国などアジアの新興市場で大きな成果を上げていたかもしれません。

その意味で、ヴァレンタインデーがやってくると思い起こす、悲しい寂しい想い出です。



投稿者 Nakanishi : 2012年02月07日 15:07