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« 国難の時、次世代国家をどう創るメイン哀れ、定点撮影本断裁 »

山田脩二「歴史をつくる写真家」

2011 / 5 /10

一夕、山田脩二の写真を見て話を聞く会が催されたので、行ってきました。70人限定の素晴らしい集まりでした。
彼は、いわゆる写真界の中では異色の存在というか、まさに個性的でなかなかの傑物写真家です。


上梓された写真集

今回は、彼が新たに写真集「日本村1961〜2010」(平凡社刊) を上梓したのを記念しての集まりだったのですが、会場では自ら選んだ数百枚の写真に、彼の簡単な説明が付されて映されました。そして終盤では、写真を映すスクリーンの前で、前衛舞踏家:田中泯氏の「場踊り」も演じられるという、異色の演出でした。

また、パネルディスカッションでは、彼をよく知る4人のパネリスト (大崎紀夫、樋口裕康、松岡正剛、木幡和枝/発言順) により、彼との出会いやそれぞれの所感について語られました。
その中で、とかく話題になったのが彼独自のモノクロ写真の特徴である強烈な黒の色調についてでした。確かに「クロ焼きの脩二」と言われる彼の紙焼きの独特の黒のトーンは、その印象が実に強烈で、見る者を惹きつけます。


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日本各地50年の貴重記録から

その彼独自の写真に賛否両論が出たのですが、正直私は「くだらない、時間がもったいない」と思って聞いていました。

彼はデビュー当初に建築写真家として認められますが、1970年前後からはいわゆる建築の作品だけでなく、都市の光景をはじめとする造形物の写真を撮り始め、独自の境地を切り拓いていきます。
それより前から、日本全国津々浦々を経巡り、街や村々、生活の諸相を画像に切り取っていました。
これらが今となっては実に貴重なアーカイブスなのです。

この間、最初は九州の湯布院に居していたのですが、やがて、「カメラマンからカワラマンに」と宣言して、30年ほど前から淡路島に住まいを移し、瓦づくりの技術や素材特性を身につけた彼は、瓦とは屋根をふくものといった概念を越えて、敷き瓦にして広い面積に利用したり、モニュメントを作ったり、食器に利用したりと、焼成温度の比較的低い淡路のいぶし瓦の温かい特性を活かして、彼独自の美意識のもと、さまざまの展開を図ってきました。
そして、そうした成果品としての瓦素材の活用だけに止まらず、最近では、今では既に見られなくなってしまった伝統的な瓦焼きのだるま窯を再生してしまいました。一度瓦を焼くために、丸24時間つきっきりでないといけないのだそうです。


自邸前、瓦のモニュメント


だるま窯

加えて、カワラマンに続いて、全国の炭の産地もめぐり「スミヤキマン」を目指したというのも、彼の生き様というか、ライフデザインの稀有なところです。
ともかく、写真も変わっていますが、生き方そのものが異色なのです。
そんなこんなから、わざわざ淡路島の彼の自邸を訪れる人も多いのですが、そこで経験するのは、独特の空間や環境での、美味しい酒と食と楽しい彼の毒舌です。

私は、桑沢デザイン研究所で彼と同級生になり、年齢も近く同じ兵庫県出身ということで仲良くなり、石元泰博・大辻清司両大先生に写真を習い、山田脩二とは最初に一緒に暗室にも入った仲です。
結果論的に言うと、以来、彼は写真家への道を歩んで行くことになりますので、凸版印刷で製版の諸工程を学びながら、その道を模索し始めて次々と習作を重ねていた時代から、「見てくれ」と私の下宿に持ち込まれてくる彼の独習時代の写真の歩みは沢山見てきました。

そこで、前述のクロ焼き脩二の話ですが、彼の追い焼きの巧みさなど、写真表現上のドラマづくりや再現時の版式まで意図した紙焼き術の見事さは、確かに図抜けているのですが、私から言わせればそういう作品主義的なことは二の次であり、注目すべきは、彼が独自の眼力と行動力で、経済成長期・停滞期・凋落期と、この日本という国の諸相を、比類なき表現で写し残し続けてきたアーカイビングの凄さでしょう。
誰もそのことに触れないのは何故だろう?との疑念を拭いきれない集まりでした。

私流に言わせていただければ、写真家にしろ表現クリエーターにしろ、「賢者は歴史を創り残し、愚者は経験を積み上げる」ということではないでしょうか。

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投稿者 Nakanishi : 2011年05月10日 10:13