中西元男 実験人生
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「数の人・理の人・目の人・愛の人」時代のデザインと展望

2010 / 8 /25

これまでのブログをお読み頂いている方にはお解り願えるかと思いますが、私が長く続けてきたデザインコンサルタント活動とは、表現デザインの分野のみに限るものではなく、企業経営の中枢テーマにデザイン思考を取り入れて優れた経営環境を創出しようとの、いわゆる「知的美的経営」を目標とするところにありました。
その40年の自らの実務経験を振り返ってみますと、昨今は経営者や企業が目指さなければならないところも大いに変わってきたというか、内容的には次第に広がりを見せてきているのだと考えています。
ひとことで言うなら、企業経営には、より明確なコーポレート・シチズンシップ(公的市民性)が求められてきているということでしょうか。

10年ぐらい前からだと思いますが、私はこれからの企業(もしくは経営者)とは、「数の人」「理の人」「目の人」「愛の人」であるべき、と折に触れ言い続けてきました。

ここで言う「数の人」とは、売上・利益といった数字的成果が確実につくれる経営者であり、「理の人」とは、その業界の理論を構築し牽引していける人、つまりこれまで私がお付き合いした経営者でいうと「我が安売り哲学」を著したスーパー(チェーンストア)ビジネスのリーダー中内功氏であり、いまだにミスター百貨店と称され時代を画すデパート業界のメソッド「山中ノート」を残した山中かん氏のような方です。いずれも自らのビジネスについて産業的視野からのロジカルシンキングが出来る方たちでした。

やがて時代が物質的に豊かさを増し、社会が工業化時代から情報化時代に進展していくに従って、情報価値や美意識を経営に採り入れる必要が生じ、また、その先行結果が成果を上げる時代がやってきました。
ここで必要とされ始めたのが「目の人」です。
まさにデザインやデザインシンキングを経営レベルで採り入れ、感動価値の創出がが経営を左右する時代が到来したのだと言えます。
企業理念や経営方針のデザインから始まるイメージ・マーケティングや日本型CIと呼ばれる成功事例はまさにその典型例と呼べるでしょう。

そして今、時代は確実に市場原理のみで動く時代から変換し、企業も、社会的な価値や責任、ESG(環境・社会的責任・ガバナンス)を無視しては存立価値を認められ難くなりつつあります。その典型例が「人間愛」や「地求愛」に代表される「愛の人」としての企業責任の遂行です。

これら「数の人・理の人・目の人・愛の人」を経営指針としてマネジメントしていけることこそ、現代の先端経営と言えるでしょう。

ただ、述べてきた上記4軸の中で、現代の日本企業に最も不足しているのは「目の人」、つまり右脳型で企業存立や経営方針を中・長期戦略として考え、そうした能力を企業力の中に組み入れることを可能とする人材でしょう。
他の3軸は、多少の差異はあるとはいえ、数字や理論で把握可能な分野ゆえ、実行できるか否かは別にして、経営者にとって理解し易いし、同様の理由で政治家も経済や経営の専門家そしてジャーナリスト達もそれなりに持論を述べ立てます。だが「目の人」に関しては、誰もがデザインの重要性を認めながらも、多くは自らの テーマとしては避けて通ろうとしています。

デザイン誌ですら、基本的には作家作品主義ヘッジから抜け出そうとはせず、企業経営に関わるデザインの域にまでは立ち入ろうとはしない、これは自らデザイン分野の可能性の芽を摘み取り視野狭窄に陥ってしまっているのだとしか言えない状況です。
これまでそうした分野での成功体験をいくつも持つ私には、この実態はデザインに対するマクロ観や長期視野の無さの証明にしか見えないのです。

21世紀はアジアの時代と言われ、事実それが現実化しつつある昨今ですが、こうした「目の人」発想では、わが国は確実に韓国・台湾・中国等に遅れを取り始めていると言えます。今も中国のさる大企業から仕事の打診を受けていますが、そこでのトップマネジメントの発言や構想を見聞きするにつけ、彼我の意識レベルの差やスケール観の落差の大きさには驚かざるを得ません。
特にわが国の場合、ここ20年ほど、デザインを自社や目先のビジネス上の利益のみを考えて捉え私的な食い物にしてきた報いが、わが国企業体の弱体化という現実として現れてきているとしか思えません。

このようなデザイン事業環境 をつくり出してしまった要因は明らかなのですが、今は日本国内の問題で内輪もめをしている時ではないでしょう。
PAOS東京にアジアからの仕事依頼があり、PAOS上海に中国へ事業進出を期待する日本企業の相談が相次ぐ。最近の私は新しいアジアの時代づくりの牽引役も、私たちの使命かと思い始めています。

考えてみればごく当然のことですが、美しい事物、快適な環境、安全性や倫理性、そして個性的な存在であろうとすること等に、異論を唱える人などいない筈で すし、それを経営戦略に採り入れる具現化を図ると成果が上がる、などといったことは成熟社会では自明の理であり、デザインのミッションとはまさにこれら指標の実現にあるわけです。
そのこと自体を分かってみれば、いろいろな専門分野においてこうしたデザイン発想を採り入れ、ソフト・ハード両面から価値創造に携わっていく歓びが、日本の新しい時代や、ナショナル・アイデンティティの構築、はたまたグローバルな発信にも大きな役割を持つというのが、私の仮説なのですがどうでしょうか、今はまだ真夏の夜の夢でしょうか。



投稿者 Nakanishi : 2010年08月25日 19:57