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COMMENT

« PAOS独自のVI表現デザインへの工夫と使命メイン著書「コーポレート・アイデンティティ戦略(Epi-CI)」刊行に想う »

久しぶりの自著「コーポレート・アイデンティティ戦略」刊行に、最近の出版界を思う

2010 / 7 /23

最近、「コーポレート・アイデンティティ戦略(Epi-Corporate Identity Strategy by PAOS)」という拙著を久しぶりに誠文堂新光社という版元から上梓しました。ただ、この本のことはあまりおおっぴらにアナウンスをしておりません。ですが、内容的にはこれまでに対外的に外に出したことのなかった諸クライアントのアイデンティティデザインに関わる、いわば実録ともいえる部分を開示していて、ご覧いただいた方には大きな反響と好評をいただいております。


本書と掲載図版の一端(ベネッセとINAXのコンセプトチャート)

私どもとして、それほどに拙著刊行の対外的アナウンスを行っていない理由は、この本が最終的な専門家の本文校正や私の装丁・レイアウトチェックなど、いわゆる本づくり上の責任、つまり最終的な著者校閲もないままにいきなり市場に出てしまった所にあります。こうした最終的なプロセスでは、書名の決定すらも私の知らないままに決まってしまっていたような次第です。著者として不思議かつ不徳の致すところと反省しています。

本書は、CI開発についてのこれまでの類書に比べますと、結構画期的な内容になっているかと思えますが、私として、対クライアントへの責任とマナーという観点からはいくつもお詫びしなければいけない本づくり上のミスが、正されることもなく商品として店頭に並んでいってしまったことも、申し訳なく思っています。
しかし内容面では未発表のそれも多く、わが国を代表する諸クライアントの開発ストーリーが並んでいますので、その意味で産業史的・経営史的価値は大きいと考えています。


目次ページ

CI開発のプロセスでは、多くの経営者の方々と個人的にお話しする機会も多く、本書では、そうした、私だけにしか分かっていない情報も可能な範囲に置いて記録として残しておきたいと考えたことと、こうして共にご相談しながら進めてきたプロジェクトの相手であった枢要な方々が、最近は次々と物故者になって行かれる事実も今回の著作の動機の一つになっています。

加えて、当初開発したいわばCIの心臓部ともいえる理念や基本方針仮説が、多くは30年近い年月を経てほとんど現実化しており、今や発表して問題になると言うよりは、CIデザインとはそうした「内なるデザイン」の実現が、本来の在りようであると明示できる段階に至ったことが本書を著した理由です。

この度の本著作のキッカケは、出版社から「経営者に分かるロゴの本をつくって欲しい」という申し出が最初の依頼だったからです。

最近は見ていても実にお手軽CI(実際はVIレベル)が多く、せっかく企業が知的美的経営という考え方やデザインシンキングという手法を自社に導入して、自らの存立意義を見直していく良きチャンスであるのにも関わらず、このような皮相的なCI開発状況では、経営上の機会損失と思える事態を、少しは見直してもらえればとの思いで著したのが本書であります。

ですが、久しぶりとなった今回の本作りの経験を元に言わせてもらうと、一昔前に比べて、エディトリアルやデザインの精度が一般的にいって実に雑になってきた、との印象を持っています。これが最近の出版界の通常なのでしょうか?

私がこれまでに何十冊かの編著作を著してきた経験との比較で言いますと、編集や造本に関わるあらゆる過程が粗製乱造になったとの感が否めません。


これまでの編著作の数々

たとえば出版依頼があった他の版元からの提示条件などを見ていて思うに、ページデザイン料や印税等に関わる金銭面なども、時に驚くような低条件が出てきます。それでも最近は自著を著したいという人が多いから仕方がないのだそうですが、わが国の出版文化は一体どこに行ってしまったのか?との思いを禁じ得ません。

たとえば、初版の半分は買い取るといった約束のもとに自著を著したという人も珍しくないようですから、こうなると出版社は本を刊行するというより、リスクテーキングを避けながら、自社の暖簾(のれん)貸しをしているといった方がいいのかも知れません。

他方、若い人が本を読まなくなったという現象や、特に高額本が売れなくなってしまったという市場状況もあって、数は出るが薄っぺらな書籍が氾濫していることも事実です。活字文化や出版文化の衰退現象そのものです。

書店も最近は、大型店舗にどんどん席巻されていく状況が一般化していて、そうなると出版社側も、書棚に並びやすいA5版の書籍に版形を合わせていくことが、重要な本作りの条件になってきているようです。

いよいよ幕を開けた感のある電子書籍化の進捗で、果たして今後の出版業界はどうなっていくのでしょうか。


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投稿者 Nakanishi : 2010年07月23日 09:10