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経営におけるDesign Thinkingとは?

2009 / 6 /12

「企業経営にデザインを可能な限り幅広く取り入れ企業革新を」と考え続けて40年以上になります。
今様に言うとDesign Thinkingということになろうかと思いますが、「企業経営における理念・指針のデザイン」「市民社会的なインフラ構築のデザイン」を上位に位置づけ、「モノづくりやサービス開発」を下位の概念に位置づけていたという点では、今振り返ってみても私たちの志向は間違いではなかったというか、もう少し高次元のDesign Thinkingの発想を当初より持っていたと言えます。

同時に、PAOS自身でそのことをモルモット的に研究・実践し、経験し続けてきたプロセスを通じ、この理念や方針は結構具現化可能であるということと、他方で、進みすぎた孤高の成果は、現実問題としていろいろ悩みや難事を抱えるものであること、その両方を体験し得たのではないかと考えております。

ともあれ、計画段階において価値の定量化測定ができない抽象度の高いプロジェクトにおいては、時間的もしくは分野的に大局観を持ってマクロ的な開発の意義と実践を可能にできる人材がなかなか存在しないために、「現実のケーススタディそのものが少ない」と言えると思います。だからこそ、試みる意味も価値もあるのだと私は考えているのですが。

実際に経営やデザインのコンサルタントの世界を眺めていましても、目の前の解決しなければならない問題に直面した際に、整理をしたり調整したりすることを主に開発を進められる人は、レベルを問わなければそこそこは存在すると思います。ただ、これでは医学に例えれば対症療法的解決です。物やサービスを単に新しくする場合にはそれで十分とも言えますが、経営革新レベルの評価で言えば、機会損失というか後にいろいろ問題を残しそうです。発明発見的創造と改良改善的創作の違いであり、表現で言えば「時代を超越したデザイン」と「目先に迎合したデザイン」との違いのようなものでしょう。
企業の経営革新を求めるプロジェクトになると、少なくとも30年位は先を読んで仮説を立てる必要があり、要は予防医学型対応というか長期的視野をもった仮説構築力を必要とします。しかもそれは、当該企業の意志決定者(トップマネジメント)や関係者を実際の行動に駆り立てていくインパクトや説得力が求められます。

現在のように価値軸の中心が工業化時代から情報化時代に移ろうとする時代の転換期にあっては、当然ながら情報化社会の先にある時代価値を想定して、企業も国も対症療法はおろか予防医学をも超える「根源療法」を前提として仮説策定を行う必要があると言えるのでしょう。
これは、完全に整理や調整の域を超えた、創造的ソリューションによる開発行為であり、それを可能とする人材を必要とするのが今の時代なのだと私は考えております。

またクライアント側から見ても、対症療法型解決は一見分かりやすいので、提案された対処法で見事に問題解決が図れるような印象を残すのですが、根源療法的解決は、抽象度が高い分だけ咀嚼力やシミュレーション力の乏しい担当者や経営者には難解であろうと思います。加えて長期的ディレクション(指針)を持つプロジェクトでは、ステップbyステップの解決策や計画の遂行も併せて必要となります。
そのためには、これは私がよく実践する手法ですが、たとえばこの仮説を実行すればこのような成果が期待できるのだといった「誰にでも分かる小さなサクセスストーリー」を開発の流れの中に織り込み、いい意味での日和見派を賛成派に巻き込んでいく仕組みを盛り込んでおくのです。半信半疑状態にある人々を賛同推進派に巻き込んでいくことが重要だからです。

もちろん、こうした長期的視野に立ったCIプロジェクト等では、先見性ある経営者(意思決定者)の慧眼も必要とします。それは、これまでの長い実務経験からもよく理解出来るところなのですが、おおむね名経営者と呼べる人はそうした能力を備えておられたと思います。
また、経営革新を重ねていくプロジェクトの場合は、永きにわたり実行できること、継続し続けられることも重要事です。

昔から「企業30年説」とはよく言われるところですが、確かに百貨店業などの現況を見ていると、このサイクルはよく理解できます。
例えば松屋銀座のプロジェクトをお引き受けした1977年頃、チェーンストア(スーパー)ビジネスが業績伸び率最盛期だったのに比べて、百貨店業は低迷業種そのものであり、「百貨店の時代は終わった」とも言われていました。中でも業績不振の代表選手のような店が、松屋百貨店であったわけです。

その際、依頼を受けたPAOSでは、4つの経営再建指針を提案し、それが今でも“ミスター百貨店”の尊称で呼ばれる山中かん社長の同意を受け、採り入れられていきました。結果論ですが、その意志決定が松屋銀座を救い、暫くは業界の中でも一人勝ちの状態を生み出すのですが、その場合の4つの指針を今様に読み替え、具体策を伴って実行してみても結構成果は上げうるのではないかと私には思えます。

どの企業でもそうですが、過去の成功事例が逆に命取りになるケースは多いものです。自らの成功事例の継承には社内の誰も逆らえませんし、繰り返してさえいればそこそこ物事はスムースに運ぶ時代が続くからです。ところが、時代の価値観が変わってしまい、気が付いた時には決定的に手遅れになってしまっていたという事例は、これまでいくつもの企業で見てきたところです。

ですが当該企業においても、ある程度の成功を見て経営危機を脱する状況になると、直言するタイプの社外の人間という存在は、かえって目障りや邪魔になってくるというケースはよく起こります。企業でも生物でも同じなのですが、ホメオスタシス(恒常性維持機能)という性向があるためです。
非常事態下では、この機能が影をひそめているため、その会社にとっては奇想天外とも言える提案が抵抗もなく導入され機能していったりするのですが、外部からの献策への取り組みが成功し自分たちだけでもそこそこうまくことが運ぶようになってくると、外部の人間にいつまでも口出しをされたくないという、その企業独自の恒常性維持機能が頭を持ち上げてくるのが通例です。私は、これまでに何度となくそういう体験を重ねてきました。
特に表層デザインではなく深層デザインに関わる経営コンサルテーションの場合には、よく起こる問題です。

振り返ってみると、内部で問題解決が図れないからこそ外部にソリューションを依頼するわけですし、外部でもいわゆる既存の経営コンサルタントでは対応が難しい時に初めて「経営戦略デザインコンサルタント」にお鉢がまわって来るように思います。
デザインを軸とした感動的な経営環境の創出は、右脳左脳を併せて駆使できるハイブリッドな問題解決能力に最大の特長があると言えるでしょう。

今は、そのような「右脳と左脳を共に駆使する問題解決策」が必要になってきた時代なのだと私は考えています。


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投稿者 Nakanishi : 2009年06月12日 18:20