中西元男 実験人生
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「知的美的経営デザイン」から救うのが一番

2009 / 5 /20

2008年から2009年にかけては、サブプライム・ローンに関わるリーマン・ショックを引き金に金融危機が瞬く間に世界を覆うことになりました。俗に言う100年に1度の経済危機の嵐が吹き荒れています。1929年に始まった世界恐慌では、4年後の1933年にはアメリカで25%の失業率、つまり4人に一人は職を失う事態にまで至ったと言いますから、今回もそのような事態にまで及んでは大変です。何とか世界の経済恐慌に持ち込まないよう先進国は必死の防戦状態にありますが、さてどういう事態になりますか?
加えて新型インフルエンザの騒動ですから、人類は永年の咎を責められているのかもしれません。

ところで、よく「ピンチはチャンス」と言われますが、今回の問題を私なりに一つ根本的なところから考察してみたいと思います。

経営資源というと、一般的には「人・物・金・情報」と言われてきましたが、これを企業経営と結びつけて考えると、次のような描きが出来ようかと考えます。



このたびの世界的経済危機は、上記の図で言うと、まず財務的経営が崩れ、買い控えから次いで物的・技術的経営が潰れ、その煽りを受けて雇用問題つまり人的経営にまで波及してきたと言えるでしょう。
要は、知的・美的経営しか残っていないということで、今はここから作興していくことこそ重要なのだと私は考えております。
前回のブログで書きました《JDB「新しいデザイン運動」》に昨今力を入れておりますのも、そうした理由によります。

麻生首相は「世界第二の経済大国」を連呼されていますが、たとえば西暦2050年におけるシミュレーションモデルの一つでは、わが国の総人口は今より約4,000万人減って現状の2/3になります。そして、その頃のGDP予測では中国がダントツの1位、アメリカが辛うじて2位、インドが3位で、この3ヵ国で世界全体のGDPの70%を占めるとも推測されています。
その頃、日本は一体どのような存在の国になっているのでしょうか?というより、どのような存在価値(アイデンティティ)を持った国であるべきか、今から仮説を立て準備を図っていくべきではないでしょうか。

かつて敗戦国日本に進駐してきたマッカーサー元帥は「日本を東洋のスイスに」と考えたという話が残っています。確かに国中が焼け野原になってしまった資源も乏しい極東の小国ですから、スイスのような小さくても独自の存在価値を持った国に、という発想はよく理解できます。

ところが5年後(1950)には朝鮮戦争が勃発し、わが国は高い知識水準と技術力を持った兵站(へいたん)基地へと、想定外の国造りに向かって舵取りを変えていきます。敗戦時の小さいけれど美しい平和国家日本は、瞬く間に雲散霧消していったのです。

その起爆がやがて技術立国・工業立国・貿易立国を経て世界第二の経済大国にまで上り詰めて行ったわけで、バブル経済崩壊後には信じられないような借金大国になりながらも、まだまだ残り火には結構力があり、家電や自動車に頼ったこの国の勢いは、そこそこ明るそうに見えていました。他方で、世界でも最速の高齢化社会現象もひたひたと押し寄せています。そうした流れの中で、現況を鑑(かんが)み次の時代を考えるためにも、この度のリーマン・ショックは良い機会だったのではないでしょうか?わが国のバブル経済は資本主義に見える「地」本主義であり、アメリカのサブプライムローンは「家」本主義です。いずれも、工業化時代型の物オリエンティッド型金融経済構造の破綻です。

わが国の歴史的発展を考えるとき、「階段状文化論」というキーワードが使われることがあります。

遣隋使・遣唐使が出かけ仏教を中心とする考えや技術を日本流に消化(昇華)することで、奈良・平安時代の独自の文化文明が生まれました。そして更に日宋貿易などの影響を受けて、その成熟がやがて室町文化に始まり江戸時代にまで繋がる固有の和の文化様式を育て、次いで明治維新では欧米の舶来文明がこの国を列強先進国の仲間入りへと駆り立てていきました。そして第二次大戦に敗れ雪崩れ込んできたアメリカの文化文明を必死に学び採り入れ、言われるままに従ってきた米国主導の国の舵取りもいよいよ怪しくなってきて、次なるお手本も無くなってきたというのが現況といえるのではないでしょうか?

ここで仮に現在の世界的な経済危機が治まったとしても、またもう一度物量主導型の典型的な工業化社会に戻るとはとても思えません。これは見方を変えると、要は産業革命に始まる「工業化時代」が終わったということではないでしょうか。つまり、日本にとっては全く新しい国造りを始めなければならない時が来たと言ってよいでしょう。

その糸口が「知的・美的経営」にあると私は考えております。
それ故にその中心的存在とも言える「デザイン」は、理念・方法・実践にわたり、これまでからは一段とグレードアップした異なった存在に脱皮していく必要があると考えているのです。
振り返ってみれば私たちPAOSが40年かけてやって来たことは、デザインにそうした能力や可能性があるかどうかの実践実験であったとも言えます。

PAOSは、皆さまにはよくCI(Corporate Identity)やVI(Visual Identity)の専門会社と言われます。また他方で、ベネッセやINAX、NTT,三井のリハウス等々いくつもの新規ブランド構築にも携わってきましたのでブランド戦略のコンサルタント会社と言われ、松屋銀座やケンウッドなど経営不振企業の蘇業のお手伝いもしてきましたので、時にイメージマーケティングを核とした経営コンサルタント会社などとも呼ばれます。これらはいずれもそれぞれに事実ではありますが、どれも総体を示してはいないと思えます。
PAOSの基本とは、ビジブル/インビジブル(見える/見えない)いずれをも含む、デザインの可能性を徹底して探究してきた組織体と言えるでしょうか。

そうした成果や経験に基づき考えるのですが、今は企業も自治体も国も、「知的美的パラダイム」から存立(アイデンティティ)を見直し、デザインし直し、再出発を図ることが重要です。

昨今は江戸時代ブームがずーっと続いておりますが、思い返せばその要因は、「江戸時代は決して経済大国ではなかったけれど、世界に冠たる文化大国・環境大国であった」と考えられていることにあるだろうと思います。
その意味で、次なる国家のアイデンティティデザイン仮説を描く出発点として、江戸時代をモデルとする発想も重要な事ではなかろうかと考えているのです。

ともあれ、今後の日本において成長の可能性が大きい重要な事業分野は、農業・教育・医療そしてデザインであると言われます。ただし、デザインが特別な能力の持ち主に頼る作家主義のそれに止まっている限りは、限界が見えています。デザインをどのように国民全体のインフラ化・国家産業化していくか。つまり、新しい形の21世紀型文化大国パラダイムの策定が、今こそ必要なのではないかと考えているのですが、どうでしょうか。

それを長期的・マクロ的「戦略美デザイン」政策として展開していくことが、わが国のナショナル・アイデンティティの主要な核に位置付けられるべきで、時間はかかるでしょうが、JDB(日本デザイン共同体)とは、そうした目標への一歩であってくれればと願っているのですが。


※JDBの新しい入会案内が出来上がりました。


ご興味がおありの方はぜひ下記事務局へご請求下さい。



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投稿者 Nakanishi : 2009年05月20日 14:00