中西元男 実験人生
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COMMENT

« 復旦大学(上海)と客員教授メイン2009年に向けての新年挨拶状(PAOS設立40周年記念) »

新年ご挨拶状と次世代デザインに向けて

2009 / 1 / 7

良き新年をお迎えのことと存じます。
私は毎年新年にあたり年頭所感とも言える文章をお届けし続けてきました。
新年の挨拶状もこのように永く続けてまいりますと、「新年は中西さんの文を熟読玩味することから始めることにしています」とか、「仕事机の前に張って何度も読み返すようにしています」「今年の自分の目標にします」などという、いわゆるファンの方も結構いらして、たとえごくごく少数派でも理解者のいて下さることは大いなる張り合いになっています。
PAOSをよくご存知ない方やデザインに直接関わりのない方からは「一体何が書いてあるのかサッパリ解らん」と言われ、デザインの専門家でもシステムや産業としてデザインをとらえておられない作品主義や自己表現を中心に仕事をしておられる方からは、「何を考えているのかヨウ分からん」とも言われます。


1976年の年賀ハガキ

元々は30年以上前に簡単なハガキ一枚から始まった新年の賀状でしたが、次第に長文の独自デザイン論や在るべきデザイン志向の提言といったスタイルになってきております。



最近は年賀状ではなく「2009年が素晴らしい年でありますように」といったタイトルで、むしろデザイン界やこの分野に永く関わる人間として、私自身の所信表明のような一文や、デザインの持つ市場的役割や社会的責任について述べるといった内容が多くなってきています。
こうした新年の挨拶状も30年余という単位で続けてきているわけですから、全部をまとめ編集してみると十分一冊の本になってくれるのではないかと思います。

わが国のデザイン界の問題というか悲劇は、デザイン解説者は多く在っても真のデザイン評論家が存在しない、というところにあると私は考えております。
音楽・演劇・美術・・・どの分野をとっても厳しいクリティック(批評)の存在していない創作活動分野などほとんどありません。むしろ、厳しいクリティックの存在や論争こそが、その分野の芸術性や発展を促進しているのだとも思えます。難しいテーマかも知れませんが、
“Good Design is Good Business, Good Design is Good Value”を貫くためにも、「目の人・知の人としてのデザイン批評家」は必須と思えます。

かつてGマークの審査委員長をやっていた頃、何度となくメーカーの皆さんから「Gマークを取った物が売れなくて、落とされた商品の方が良く売れた」といった批判の声を耳にしました。こうした事実の背景には、消費者の美的民度やその時々の流行、広告・販促活動の影響も無視できませんので、近視眼的に売れればよいというものではないのでしょうが、いわゆる「消費とは何か?」「デザインの在り方とは?」を基本とした、市場や社会のメカニズムを審査委員達が正確に把握していなかったことの責任に帰する部分が大きいことも、間違いのない事実です。
ですから私自身の考えとしては、デザインが社会的役割を果たしていくために、いわゆる作家主義を標榜する「デザインアート(作品)」だけではなく、デザインの産業化を図ったり、わが国の社会的インフラ化を推進していく「デザインインダストリー(産業)」の醸成が必要と何十年にもわたり主張し、微力ながら行動し実証を続けてきたつもりです。
ただこうした姿勢というか行動を貫く上で難しいのは、自らもビジネスとしてデザインコンサルタント業を営んでいる身であるわけですから、時に私見の表明が競合他社(者)の誹謗と受け取られないかという問題への危惧です。

ともあれ、歴史的流れとしては工業化時代から情報化時代・成熟社会への転換期にあたり、遂に来るべくして訪れた今日の稀有なる経済危機への対応策は、続々とデザインを国家戦略に位置付け始めた国々が現れ始めていることへの留意であり、時流への注目です。
既にいささか遅きに失しているとは思いますが、デザイン界に永く身を置く者の一人として、是非、産官学民が力を合わせ明確なパラダイムの変換と内容づくりの強力な実践と証明を図っていきたいものと念じております。

昨年末に、経済産業省デザイン室の皆さまにご挨拶に上がり、今後のデザイン政策推進について気楽にというか自由な意見交換をさせていただきましたが、個人的には大変明るい流れを感じました。

この度の100年に一度とも言われる大変革期にあって、受注産業としてのデザインという従来の枠組みを破り、次なる時代・次なる日本を変革創造する一翼を担い牽引していく役割を果たす分野こそデザインである、という事実を、証明できる存在たらんと祈念致している次第です。


※本Blogへのご意見・ご感想をお待ちしております。
こちらまでメールをお寄せください。
Blog内にてご紹介させていただく場合もございますので、何卒ご了承願います。



投稿者 Nakanishi : 2009年01月07日 13:00