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ベネッセ「文化化コンセプト」花開く

2008 / 4 /24

ベネッセコーポレーションの福武總一郎会長 兼 CEOが、先般「芸術選奨文部科学大臣賞」を受賞されました。文化庁の贈賞理由には、『かねてから瀬戸内海に浮かぶ直島において,「アートの日常化」を推進してきたが,大自然の中や古くからの家並みが残る地区など様々な場所を使って,「風景をつくる」ことをテーマとした作品を展示し,直島という空間のアートとの結び付きによる新たな魅力を内外に示した』とありますが、企業人としては初めての受賞だそうで本当に嬉しいことです。

遡れば、ベネッセ(当時は福武書店)に「文化化」なる企業指針を提案させて頂いたのは1980年のことですから、今回のご受賞は実に28年を経ての快挙、そして先代の創業者:福武哲彦社長と二代がかりで受けられた賞ということにもなります。


福武哲彦創業社長

福武創業者が最初にご相談に訪ねて見えたのは、1979年のことです。当時は経済的成長こそ経営者の勲章であり、企業は立派な経済機関でありさえすれば善、という時代でした。ですから、振り返ってみるとこの時の経営者発想は、当時としてはというか、時代の価値観という点からだけで評価すると、いささか変わっておられました。
受験産業としては、この頃既に勢いを得て伸び続けており、高い収益性も見事なものでしたから、通常であれば勝てる部分に事業特性を絞り込み全国制覇を目指す、というのが当然の方針であったろうと思えました。しかし哲彦社長は、「今のままでも十分伸びていけるが、地方の一受験産業では終わりたくない。将来、どのような会社になっていけばいいのか相談に乗ってもらいたい」と言われ、それがご上京ご来社の理由でした。

面白い発想を持たれる方だなと思い、請われるままにその後、岡山の本社を訪ねました。当時の本社の建物は、もともと女学校の古い木造校舎だったものを利用されていて、かつては小学校の先生をなさっておられたという教育者としての強いDNAのようなものを感じました。
事実、当時の福武書店の主要な行事を見せていただくと、社長は校長先生、社員は生徒達といった、まるで学校のような独特の雰囲気がありました。


福武企業文化の象徴、当時のオール福武祭のワンシーン。参加者全員で肩を組み合い社歌斉唱、は会社というより学校のイメージ。

特に哲彦社長に創業時からの福武書店についてのお話をいろいろ伺っていく中では、単に事業家を目指しておられるのではない何物かを強く感じましたが、それが言葉になって現れるというほど具体的プラン化している段階ではないように思いました。


以前から使われていたマーク・ロゴ類をひとまず整理し、デザインリファイン、システム整備を行った


リファイン作業中の1カット

PAOSとしては、当面のロゴのデザインリファインや使用上の規定づくりを行うことはすぐに方針明示ができ、プロジェクトは進行していきました。しかし、福武書店が本来どのような会社としてアイデンティファイしていけばいいのかといった肝心の主要テーマの方は、暫くは雲の中といった感じで時間が過ぎていきました。

ある日、「社名の“福武”というのは解りますが、どうして本屋さんでもないのに“書店”が付いているのですか?」と私がお尋ねした時、創業者から意外な答が返ってきました。それは「できることならば、将来岩波書店のような文化の香り溢れる会社にしていきたいからだ」と。これにはピン!とくるものがありました。結果、企業の将来目標として「情報化・国際化・文化化」なる指針をご提案していくことになったのです。1980年のことです。



「情報化・国際化」は今から見ればごく普通の指針のように思えますが、当時岡山に本社を置く地方企業としては随分身の丈を越えた指針ではありました。それ以上に「文化化」という指針は、爾来30年近くを経た現在でも、企業目標としては十分斬新と言えるのではないでしょうか?
しかもこの会社は、すぐさまこれらの指針の具現化に向かって取り組み始めました。「情報化」ではIBMの大型コンピューターを導入し、「国際化」ではいきなりニューヨークに現地法人を設立してしまったのです。こうした先見性ある積極的な企業行動が、今日のベネッセコーポレーションとしての繁栄に繋がっていくわけです。

この中で簡単には具体的な企業行動に移せなかったのが「文化化」という指標でした。
しかし、言葉は言霊(ことだま)と言いますが、一つことを思い続け念じ続けていると、次第にそのことが具体的な試みとして姿を現してくるものなのです。

1986年に福武哲彦創業社長が急逝され、總一郎社長が二代目を継がれることになり、PAOSでは第2次CIプロジェクト開発のご依頼を受けました。これを機に「Benesse(ベネッセ)」なるコーポレート・ブランドが生まれます。Benesseとは、ラテン語のBene(良い)とEsse(生きる)を合成した造語で、この会社の企業存立と事業展開の根幹となる「人は何のために学ぶのか」を徹底探求していくところから企業発展を目指していくことを掲げた、PAOS流に言いますと「フィロソフィ(企業哲学)ブランド」なのですが、詳細はまたの機会に譲り、企業経営と文化の問題に話題を戻しましょう。


新コーポレートブランドBenesseに決定される事前検討資料


“Benesse”の採用が決まる頃描かれていた、在りたい企業経営像


最終的にラテン語を源とした合成語が企業ブランドとして選ばれ、今日に至る

福武總一郎社長の時代になり、「文化化」の理念は、コンテンポラリーアートを主体とし、建築家に安藤忠雄氏を起用した施設づくりや、その後の古民家を活性化させた家プロジェクトなどの成果が今日では余りにも有名かつ世界的な、現代アートと企業経営融合の拠点「ベネッセアートサイト直島」へと昇華していくことになります。

「企業は文化の僕(しもべ)」とか「文化への投資が株価を上げる」なども總一郎現ベネッセ会長兼CEOの言ですが、直島での取り組みは、確かに現代の先端経営を象徴する素晴らしい証明というか、優れたケーススタディと呼べるものでしょう。
この辺りへの説明や評価は語り始めると限りなく出て参りますし、今では多くの紹介もなされておりますので割愛し、ここでは福武總一郎会長の芸術選奨文部科学大臣賞ご受賞をお祝いし、文化化の成果を心から寿ぎたいと思います。

ところで、なぜ私がピンときて「文化化」というキーワードのご提案をすることになったのか、ほとんど知られてないその裏話を、次回のブログにアップしてみましょう。



投稿者 Nakanishi : 2008年04月24日 13:52