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昨年の事故入院時の記録から(その6)

2008 / 3 /13

回復力とリハビリ

事故後1年を経過してみますと、多くの方々から「よくぞ回復した」とか「回復が非常に早い」などと言われます。担当医の先生からも「大変順調な回復です」と喜んでいただいており、それはそれで素晴らしいことであるとは思いますが、自分では全てが初めての体験でありチャレンジでもありますから、比較するモノサシを持たず、何が早くて順調なのかはよく分かりません。

ともかく、リハビリは2007年1月31日から始まりました。事故が同月13日、手術が23日でしたから、「まだ車椅子への乗り移りすら苦痛で不便をかこっているし、身体中に管をぶら下げたままでもあるのに、もう始めちゃうの?」と思いました。しかし整形外科の先生のお話では、当初は大変でも少しでも早く始めた方が回復が早いとのこと。「あとは本人の気力に掛かっているのです」と言われました。
入院中は、地下1階にあるリハビリテーション科に看護師さんに車椅子を押して貰って出かけ、理学療法士の方に指導されながら、痛みをこらえつつ柔軟体操のような動作をいろいろやっていきました。時間は1回30分弱ですが、あちこち筋肉が痛くて、わずか半月の入院生活でこんなにきつくなるものかと思い知らされました。
筋肉はたとえ一週間使わなくても衰えるのだと言われましたが、確かにある日わが両足を比べ驚きました。傷を負った左足と健全な右足の太さが、まるで同一人物のものとは思えない程に異なっていたからです。

私の場合、リハビリ最大のポイントは左足でした。ここには今も20cmを越える縫合跡が残り、中に10数cmのチタンの金属板が入っているのですが、この左膝は最初のうちは40度までしか曲がりませんでした。これを毎日1時間かけて曲がるようにベッド上で特殊な機具を使いながら訓練していくわけですが、痛いのをガマンしながら曲げていくと徐々に角度が深くなっていき、退院間際には150度まで曲がるようになっていました。健常者は160度までは曲がるそうですが、限りなくそれに近いところまで到達できたことになります。それでも「正座は一生あきらめて下さいね」と言われました。

脚のリハビリの場合、まずは90度まで曲がればイスには腰掛けることが可能となりますので、私くらいの年齢の人はそのあたりで諦めてしまうことも多いのだそうです。そんな話は後から聞いたことで、頑張れば元に戻れると私自身は信じていましたので、毎日々々リハビリを真面目にやっていたら、「稀に見る回復ぶり」と言われる結果になったという次第です。
でも、筋力強化と合わせてこれをやっていったお陰で、「車椅子→松葉杖2本→松葉杖1本→杖→補助なし歩行」のプロセスも、比較的早いスピードで進化できたのだと思います。因みに当初ベッドで使用したリハビリ機具はカナダ製でした。

リハビリで面白かったのは口を開ける訓練です。
入院時には歯が5本完全に折れていたのですが、特に上前歯4本は骨まで損傷を受けており、入院早々に上下のあごを細い針金状のもので固定されてしまいました。そうしないと残った歯の位置が勝手に動き始めてしまうのだそうです。この処置のため1ヶ月ほどは液体状のものしか口に出来ませんでしたので、すっかり胃の方が小さくなってしまい、1年以上経過した現在も体重の方は事故前に比べ8kg位少ないままで推移しており、これは思わぬ余得でした。ですから妻には、「何か特別なことをするより、上下の歯を1ヶ月縫い合わせておいた方が痩身効果は期待できるよ」と冗談を言っております。

口が全く開けられない状態がしばし続きましたので、上下の歯の固定をはずしてからは、口を大きく開ける練習が始まりました。これがなかなか大変で、口を大きく開けるリハビリがこんなにも苦労の多いものとは想像だにしていませんでした。
検診に行くたびに、先生が三角定規のような測定具を歯と歯の間に入れて、上下幅が何センチ何ミリまで開くようになったかを測るのです。あごの筋肉が緊縮してほとんど上下間隔ゼロの状態から、目標としては上下の歯幅4.5cmまで口が開くようになるまで訓練していこうというのです。今ではこの目標もクリア出来ましたが、「前回より1ミリ多く開くようになりましたね」などと言われながらのリハビリは、数値的に細かい進化ですから、正直シンドイものがありました。
でも「4.5cmというのは、にぎり寿司が自由に食べられる口の開きです」と言われ、すっかり開口目標が定まりました。以来、私のイメージ目標は、美味しい江戸前寿司屋のカウンターに座って存分ににぎりを味わう自分の姿となり、じわじわと順調に、わが食いしん坊口は開くようになっていったのです。

リハビリに限らず、人間はなるべく目標を具体的に設定し、イメージトレーニングに励むことが肝要ですね。
松葉杖から一本杖に移行する際にも、いわゆる伸び縮み自由の、多くの老人たちが使っている一般的な杖は使いたくないとの思いを強く持っていましたところ、松屋銀座のユニバーサルデザイン用品売り場で、会津の漆塗りの実に美しい杖に出会いました。すぐさまそれを購入、眺めながらかっこよく漆塗りの杖をつき歩く己が姿に思いを馳せて、リハビリに励みました。

「おまえって単純な男だな」と、今でも思い起こすところですが、仕事でも個人の成長でも、目標は極力単純明快で夢ある形に策定しておくことが重要であることを改めて確認した次第です。



投稿者 Nakanishi : 2008年03月13日 12:58