中西元男 実験人生
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次は「デザインをブームに」するのか?

2007 / 9 /20


ここのところデザインが大変活況を呈しています。今、店頭を飾る雑誌類をランダムに買い求めてくるとご覧のような状況で、「デザイン」というキーワードが一般誌の誌面を多く飾る、というか、デザインというテーマが踊っています。


思えば50年近くも前から、デザインを日本のインフラにすべきと主張し、研究し、行動し続けてきた私にとって、これは真に喜ばしい現象とも思えるのですが「チョット待てよ。ひょっとするとこれもまたマスコミが仕掛けた次なるブームに過ぎないのであって、単なるフロー現象として冷静に見届ける必要があるのでは?」と考え込んでしまいます。少し見方が悲観的過ぎるでしょうか。


あらゆる人工物に審美性や快適性・個性等を与えることがデザインの使命であるとするならば、デザインとはまさにW.グロピウスが言うところの社会や生活にとっての「共通公分母」であって、人類の重要な宝とも呼べるでしょう。それを少しでも具現化していくことが私のライフワークと考え、これまで長くその道を愚直に歩み続けて来たわけですが、最近のように猫も杓子も「デザイン」「デザイン」と騒がしいと、ひょっとして売らんかなの商魂だけの表出ではないかと考えてしまうのです。杞憂でしょうか?


振り返ってみても企業や自治体が経営レベルでデザイン発想の重要性を認識し、時代の価値体系に遅れることなく、自らの存立意義や理念をデザインし、発想や行動の中に表出していくことの重要性を謳ったCI は、これを重要な経営課題と考えるトップマネジメントの理解を得、いくつもサクセスストーリーを生んできました。しかし、ブーム化と共にやがて表層的なVIレベルに堕し、最近では企業のロゴをデザインするだけでCIなどと考えるデザイナーまで現れる始末です。これらはいわゆる「CIもどき」に過ぎないのであって、とても企業の拠って立つところのアイデンティティ・デザインなどと呼べる代物ではないでしょう。その証拠にCIブームと共にプロジェクトに失敗事例が続出し、やがて「CIの時代は終わった。次はブランドだ」と分かったような分からないような言い種で、ブランドブームが吹き荒れました。その中身をよく見てみると、内容的にはCIとほとんど変わらないばかりか、CIの時代には企業の存立テーマとして経営者自身が真剣に取り組んだ事例も多く見られたものが、ブランドブームのもとでは経営の手法レベルで捉えられることが多く、トータルなデザインというマクロ観から見ると、むしろ矮小化したとしか言えない現象を呈してくる始末でした。


そのブランドブームも最近ではさすがに下火になってきた感が深く、ケーススタディを背景に、冷静にこれを見据える流れが出てきました。良いことです。ところがこれに取って代わって、むしろ物欲型成熟現象としてのデザインがブームを呈し始めたと見なせなくもありません。今日におけるデザインの活況が単なるブームもしくはフローとしての流行現象で終わるのか、あるいは日本人の生活・社会のインフラとして定着するのかは、数年ウォッチしてみれば明らかになることでしょう。


仮にデザインが日本人の生活や社会にとって文化的ストックにならずに終わってしまうとすると、果たして次なるブームとは何なのでしょうか?「アイデンティティ」ブームなどという現象が現れてくるのかも知れませんねぇ。数年というスパンで観察してみるのも面白いのではないでしょうか。
まぁ、何がやってきても私自身のデザイン哲学や信念は決して変化することはないでしょう。というか、今さら流行に身を任せる器用さなど私自身は持っていませんので、愚直に歩むのみと考えているのですが。



投稿者 Nakanishi : 2007年09月20日 20:18