中西元男 実験人生
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「クローズアップ・デザイン」最近のデザイン報道を見て

2007 / 6 / 5

「日本のデザイン戦略は立ち後れていないか」で始まり、
「何故、デザインの時代?」
「デザインを活かせる国になるためには?」
といった質問が続き、最後にインタビュアー国谷裕子さんの「一般の人がもっともっとデザイン力に対する認識を持ってもいいと思うんですけれど・・・?」の言葉で番組は終わりました。NHK『クローズアップ現代』に国家のデザイン戦略が取り上げられた時のことです。

最近はデザインが随所で脚光を浴び始めたこと自体は誠に好ましいことだと思います。このNHKの番組だけでなく、新聞・雑誌・TVと実に多くの報道がデザインをテーマになされています。特に三宅一生さんの提案によって生まれた、今話題の都心型複合開発施設:東京ミッドタウンの21_21 DESIGN SIGHTなるデザイン専門美術館がひとつのきっかけにもなっており、デザイン界に身を置く者として本当に喜ばしく思っています。


だがいささか気になるのは、「デザイン=作家デザイナー」の世界の話に終始してしまい、中で紹介される発言も多くは作者的・感覚的な内容もので、いわゆる市民・生活者を納得させるようなデザインの社会的価値に関する説得力ある明快な答えがほとんど出てこないことです。せっかくの機会なのに、といつも残念な印象を持ち見ております。この辺りの状況を、多くのデザイン関係者はもちろん一般の人たちはどう見ておられるのでしょうか?
たとえば冒頭で紹介した質問は明らかに、どのような造形作品が出来るか?とか、作ればいいのか?といった話ではないでしょう。一般の視聴者に対して、
「今日のデザインとは何か?」
「デザインは社会や生活にどう貢献できるのか?」
「国家戦略としてのデザインはいかにあるべきか?」
等について、デザイン界としての分かりやすい回答を提供すべき責が求められているのではないかと思います。

考えるに、こうした問いかけに対して多くの人々に理解される形で答えていくには、デザインに対する明快な哲学・論理構築、そして生活的・市場的・社会的な価値創出力を背景とする説得力が、デザイン関係者自身に必要だと考えます。つまり「戦略デザインとしての思考や発想」が底流に無ければ難しいのではないでしょうか。

今日では「デザインの世界=デザイナーの世界」ではないことぐらいは少し説明を加えればすぐに分かることです。たとえば、高齢化社会や環境の問題に対し、ユニバーサルデザインやエコロジーデザインを採り入れた解決法というテーマなどは誠に重要ですが、これをデザイナーたちに任せれば全て充足されるなど、当のデザイナー自身ですら考えてもいないでしょう。
ましてや安倍総理の「美しい国」論や、「デザインの国家戦略」などというテーマになってくると、「この国をデザインでどうするのか」といった、長期的・戦略的・計画的なマクロ観を持ったデザイン思考や政策が必要なのであって、それが産官学民で共有可能なテーマにならなければ実現は不可能と言えます。
そのためにも日本は先ずインターディシプリナリー(学際業際的)に共有化できる国家としてのデザイン哲学と構造的解決指針を必要としている、と私には思えるのですがいかがでしょうか。

せっかく盛り上がってきたデザイン重視の機運を、作家作品主義ワールドの中だけに閉じこめるのではない「戦略デザイン」の思想と方法論を、是非開発明示していくべきだと考えている次第です。



投稿者 Nakanishi : 2007年06月05日 13:23