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アーク都市塾は36期から37期へ、大切なのは「欲識」

2006 / 10 / 2


※36期卒塾パーティでの記念写真


去る9月25日にアーク都市塾第36期の卒塾式が行われた。私は「ブランド戦略マネジメントコース」の講座を30期から担当しているので、早いもので7回目の卒塾生を送り出したことになる。11月1日から始まる37期は6回と変則なので、通常の12回コースを受けた人も受けていない人も、なるべく対等に講座に臨めるような内容にしたいと考えている(講座名「アイデンティティ戦略プログラム構築コース」)。そして、より実践力がつけられるよう配慮し、かなりワークショップ的にしながら、ブランドやデザインに関わるイメージマーケティングに関わる実務を下敷きにした構成にしていく予定である。


ところがちょっと驚いたことに、実務力をつけるためのベースとするテーマに「日本or日本人」を設定していたのだが、安倍晋三新首相の所信表明が、何と「美しい日本」の「カントリー・アイデンティティ」ときた。


次期講座で日本をテーマにしようとしていたのも、日本が世界に類例のない状況に置かれているということは参考となしうるお手本の無いということであり、そういった国家のナショナル・アイデンティティについて、特に美意識や文化という点を切り口を核に塾生の皆さんと考えてみたいからである。同時にそのプロセスを通して、情報収集や戦略立案(こちらの方が大切なのだが)の実務力をつけていただきたいとも思う。その格好のテーマが日本という国であろうと考え想定したのだが、まさにピッタリ同じような方針が安倍首相の所信になっていたのだ。「ビックリしたな、もう!」である。


ただ、別にケチをつけるつもりはないが、「カントリー・アイデンティティ」との用語は少しおかしいのではないか?やはりここは「ナショナル・アイデンティティ」の方が適語であろう。


かつて神奈川県の首長に選ばれた長洲一二知事のご依頼により「KI (神奈川アイデンティティ)」なるプロジェクトを手がけたことがあったが、この時も当初はカントリーかコミュニティかが議論になった。地域起こしということだからカントリー・アイデンティティか?ということであったが、最終的には長洲知事の発案で「KI」になった。


カントリーは、やはり国家と言うよりは地方とか地域のイメージが強いのではなかろうか?



※KIに関する意義・ストーリー・諸規定
(クリックすると拡大してご覧いただけます。)


ところで、私は自分自身の学びの足跡を振り返って見ても、本来教育とは「教え覚えさせる」ものよりは「刺激を与え触発する」教育の方がずっと役に立つと思える。ゆえにアーク都市塾の講義でもブランド戦略そのものの内容説明やHow to的手法取得に重きを置こうとはしていないし、それよりは、実務家として経験した一瞬の予期せぬひと言や、企業の命運を左右した意志決定の瞬間と理由やWhy to、周りの状況や関わった人たちの信条や果たした役割等を、なるべく現場感覚や記録として残る資料を大切にしながら伝えようとしている。


40年にも渡り研究し実際に携わってきた知的美的企業経営というフィールドを、ケースバイケースの実務経験から種々論じてきているが、トップマネジメントに携わる人たちの考えの推移や意志決定にあたってのひと言ひとことは実に重く大きい意味を持つことが多いので、なるべくそうしたことの実態や背景を忠実に伝え、現場感覚で感じ取って貰おうと努めている。


「賢者は愚者に学び、愚者は賢者に学ばず」と言うが、総じて優れた意志決定者は、いざという時に信じられないような飛躍を見せるし、見事な勘を発揮する。加えて、トップたちが情報収集や分析の勘どころを見事に心得ている点には、感動させられることがしばしばあった。これは他人の知恵や周囲の情報収集に常に執念と鋭い感覚を持って謙虚に臨む姿勢によると言えるし、裏返すとこれが的確な意思決定者たるパワーの源泉であるような気がする。

塾生の皆さんには、よく「常に欲識をもって事に臨め」と奨めているが、何故こういうことを言うかというと、一流の経営者やプロフェッショナルから私自身が学んできたからである。


学びや情報収集の場おいて、その段階は「常識・知識・欲識・胆識」と分けられようと自身の経験から考えているが、生活習慣として欲識を持って臨むか否かで、その集積はやがて大きな差となって表れる。


世の中には比較的よく見られるケースだが、「実に博学と呼べる物知りなのに、全く企画力は無い」という人物に出会うことが多い。かつてはそれを不思議に思ったものだが、そのうちにあることに気がついた。こうした人物は、使う立場や活かす立場に立って情報収集をしていないのである。だから他人の知識がそのまま頭に詰まっているだけで、自分で使いこなせる固有知識になっていないのである。



※講義中の1カット


それに比べ「欲識」とは、自分が使う立場に立ち、欲を持った上での情報収集であるから、いつでも企画に直接的に結びつくのである。


クリエイティブ (創造) とは、ほとんどの場合「過去の要素の新しい組み合わせに過ぎない」から、情報や知識をいつでも組み合わせられる状態で自分の引き出しに入れておかないと、せっかくの貯め込んだものが結局使い物にならないことになってしまう。


ブランドとは何かという理論や、どこの会社ではどのようにして成功したといった事例などをいくつ覚えても、それは他山の石に過ぎない。本を読めば書いてあることやケーススタディをいくら頭に詰め込んでも、大抵は実際の場での用には供し得ないのである。


そのような姿勢をこそ「ブランド戦略マネジメントコース」の塾生の皆さんには第一に会得して頂きたいと、老婆心ながら常々考えている。


※ご参考
アーク都市塾|アイデンティティ戦略プログラム構築コース
「実践的・研究的ワークショップで学ぶ戦略デザイン、テーマは日本のアイデンティティ・クライシス」

アーク都市塾



投稿者 Nakanishi : 2006年10月02日 19:48