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亀倉雄策・田中一光両先生「社会的使命感を持ってデザインする」 »
■マックが出てきてデザインがマックになってしまった
2006 / 6 /27
イギリスを代表するインダストリアル・デザイナーであり、世界デザイン会議の議長なども務めたケネス・グレンジ(Kenneth Grange)氏。彼は現役をリタイアし、古い農家を購入して時間を掛けこれを改装し、田舎暮らしに入ってしまった。
以前、話をしていた時に彼が述べた面白い表現が「マックが出てきてデザインがマックになってしまった」なる言葉である。
これは「Macintoshが出現した結果、デザインがMcDonald’sになってしまった」との意で、簡単に説明を加えると、要するにパソコンでデザインするようになってからは、パソコンが使えてそこそこのセンスのある人ならば、本当に美意識の高い「目の人」としてのデザイナーや修練された技術精度を併せ持つ人でなくても、プロのデザイナーになれてしまう時代になった、ということである。
「誰でもが食せはするが大したご馳走とも言えないデザインが世の中に氾濫し、それをまた雑誌等のマスコミが売らんがために囃し立てる。その結果、デザイン品質の玉石混交状態が起こり、それほど優れたデザインとも言えない仕事が大手を振って歩く世の中になってしまった」とのK.グレンジ流の皮肉だが、このような状況を果たしてどうとらえればよいのであろうか?
パソコンの出現によりデザインする人の底辺が拡がり、パソコンをうまく活用できれば誰もがデザインができるという「デザイン大衆化時代」が到来したのは悪いことではない。しかし、これによって明らかに「時代を超えた歴史に残る名品」というような事例は生まれにくくなってしまったと言えるだろう。同時に、そうした作品力をディテールにまでわたって見抜く能力を持った人物もまた、少なくなってしまったように思える。
底辺の拡大が頂点を押し上げ、「美しさやオリジナリティ」という点でよりレベルの高いデザインが生まれる構造がつくれないものだろうか?
このためには、デザイン界全体が社会的使命感を持って動くと言うことと、もう一点、名伯楽とも呼べる美意識の高い経営者や政治家が必要とされていると言うことであろう。
投稿者 Nakanishi : 2006年06月27日 20:16