中西元男 実験人生
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「優れたシンボルは思想の凝縮」1

2006 / 1 /31

昨年は、ブリヂストンがCIプロジェクトを開始してちょうど四半世紀、INAXがブランド変更をして20年。どちらもおめでたいと同時に立派なサクセスストーリーとして成長してくれたと嬉しく思います。


前者はこれを記念してアーク都市塾に石橋寛監査役(創業者のお孫さん)をお迎えし素晴らしい特別講義をして頂き、後者の場合は祝賀パーティにお招き頂き伊奈輝三名誉会長や杉野正博社長など同社歴代幹部の皆様と久しぶりに親しくお話させていただきました。どちらの場でも「あの時に思い切って開発実施しておいてよかった」と異口同音に喜びの言葉が語られました。

※ブリヂストン:石橋寛監査役をアーク都市塾に迎えての講座

※INAXブランド導入20周年の記念パーティ、水谷前社長(左端)、杉野正博社長(右から3人目)の顔も

※INAX CI戦略導入の名経営者:伊奈輝三現名誉会長(右)と


よく「優れた企業シンボルは思想の凝縮」と言われ、他方で「現代の事業シンボルはマーケティング・ツール(道具)」とも称されます。前述両社はまさにその証明としての成功事例でしょう。というより永年時間をかけてそこまで育て上げた事例といえますし、本来、CIやコーポレートブランド開発を行うとは、単品のマークやロゴだけをデザインするのではなく、ちゃんと企画哲学や経営方針を定めそれを実現していくためのシステムズアプローチをデザインしていくことでしょう。上述の2社はそうしたプロジェクトであることの証明のような事例といえます。


ところがこうした教科書とも言える経営的成功例が多くあるにも関わらず、未だに自己満足的にロゴだけをデザイナーに頼んだり、時には一般公募のうえ採用して良しとする旧態然としたマーク屋さん的発想のプロジェクトも後を絶ちません。


単に記念イベントやお祭り的な公的機関の行事であればその程度でもいいのかも知れませんが、大きな事業を育てていこうと企図されているような目標のある長期的・戦略的なプロジェクトの場合、こうした思想性や政策性を持たないうすっぺらな形いじりとしてのデザイン開発行為は、現代のブランドやイメージマーケティングの何たるかを解しない無駄な投資としか思えません。ある意味では、企業が情報化時代を成熟化社会にアイデンティティを確立するそのチャンスを自ら捨てているようなものです。

※旧来のロゴ・マークは自己証明の「紋章」

※現代のロゴ・マークは重要な「マーケティングツール」

これまでの経験から言っても、優れかつ進んだ経営センスを持った経営者の皆さんは、ことデザインについては門外漢でありながら、上述の意味するところを瞬時にして解され協力的な立場に立って行動される方が多かったと思います。


たとえば、電電公社からNTTへの変更時に総裁そして初代社長を務められた新藤恒氏がそうでした。

※電電公社の旧マークや施設表示類

※旧マーク

※NTT新デザイン開発のための基本コンセプト

※開発計画提案書の一部


電電公社民営化に当たっての企画コンペに勝利し、初めてお目にかかることになったとき、仲介にあたった電通のディレクターの方は「中西さん、真藤さんという方は何か一言中西さんが発言をすると『私はそうは思わない』とか『それは一体どういう意味か?』と意見や質問をされるため、今回は45分という時間を頂いているけれど、多分、中西さん自身でしゃべれる時間はまあ15分もあればいいと思った方がいいですよ」といわれて初会見に臨んだのでした。


確かに真藤さんという方は優れた実績を残されてきた経営者であると同時に、元々は造船の技術者であり、その分野では真藤船形とまで呼ばれた成果を残してこられた世界的にも著名なエンジニアであったとのことであったし、私の話すデザイン論やCI発想が本当に理解いただけるのだろうか正直半信半疑ではありました。


ところが話し始めてみるとじぃーっと聞き入られていて、自らは一言も発せられようとはなさらない。30分くらい続けて話し終わったとき秘書がメモをもって呼びにこられたところいかにも不機嫌そうに座を立たれ、しばらくするとぷりぷり怒りながら再び座に着かれました。私は何か文句でも言われるのかなと少々びくびくもので相対したところ、真藤さんは「せっかく素晴らしい話しを聞いているところに、あの馬鹿な秘書が下らん代議士の訪問など取り次ぎよって申し訳なかった。どうぞ先ほどの話しを続けて下さい」と言われたのです。結果、予定の時間をはるかにオーバーして初会談は終わり、それからというもの私たちの意図する提案は毎回じっくり理解して頂き、ほとんど提案通りに意志決定されていったのです。


その最も典型的な事例が《NTT》という呼称(コーポレート・ブランド)の採用でした。われわれは今後の国際化時代におけるこの組織の存在を考えるとNTTというブランドの採用に踏み切り、それを元に新会社のVIは展開されるべきだと進言したが、当初、新聞紙上では概ね「新電電」と称されていたから、30数万人の職員の皆さんには馴染みもなく内部調査ではNTTブランドの採用は80数%の人たちが反対との結果を得ましたが、真藤さんのまさに鶴の一声で採用が決定されたのでした。


まさに、NTTが民営化サービス業に変身し、わが国を代表するマーケティングツールとしてのブランド誕生の決定的背景がここにあったと言えます。

※新マーク

※膨大な組織にシステマチックに展開されるNTTのVIイメージを確立するための構造チャート:NTT CIS Tree



投稿者 Nakanishi : 2006年01月31日 18:35