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« カレンダー、年賀状、そして虚礼廃止考メイン昨年末に飛び込んできた実に嬉しい話題 »

新年のご挨拶

2006 / 1 / 1

明けましておめでとうございます。

今年から新年のご挨拶は特に年賀状というスタイルをとらなかったことは、既に申し上げたとおりです。ただ、私のブログをごらんいただいている方でも封書でお送り出来てない方が多くいらっしゃることと思いますので、同文を以下に掲載させていただきます。


ご覧になって、もし封書の原文そのものを求めたいとお考えの方は、あなたの送り先をご連絡ください。あらためてご送付させていただきます。


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2006年が素晴らしい年でありますように


表参道の現在のオフィスに移ってそろそろ6年になろうとしておりますが、立地の良さゆえか、次々とお客様に来ていただける先客万来の風が吹いております。また、こうした場所やキャリアのせいでしょうか、いろいろ夢の多い、が、同時に将来に向かって創意苦労も多そうなプランニングも求められております。近頃、中国へは年に3、4回の割では出かけておりますが、特に上海を中心に新たな展開が生まれそうです。最近の世の大きな流れを見ておりますと、デザイン分野には明らかに次なる波頭が見え始めたものの、旧デザイン志向も結構頑迷固陋で、新しい動きが見えている人は未だ10人に1人もいないのかも知れません。特にわが国のデザイン界が、先を見誤らず次の手が打てればよいのですが・・・。


拡がりのPAOS


最近は、PAOSWGD(World Good Design)、教育活動、個人活動と4足のワラジを履いているような日々です。どうやら年齢と共に頼まれごとが増える一方で、少々疲れ気味ではありますが、考えてみれば期待をされお役に立てているというのはありがたい話です。40年前に特に起業をしようなどと考えたわけでもなく後輩たちと始めた大学時代のサークル活動の延長が、現在のような形で自らの人生やライフワークを形成していくとは当初想像だにしていなかった展開と言えます。デザインの哲学や方法論を極力幅広くという「核・拡デザイン」の発想、つまり、あらゆる人工物への審美性・快適性・安全性・個性などの探求をミッション(使命)にしようとしたのが目標ですから、徐々にではあれ企業経営や社会、生活全般に拡がりを見せる動きが強まってくれる最近の傾向は本当に嬉しいことです。これこそ40年以上も前からの構想の実現なのですから。


また、日本が尊敬に値する国になるためには「文化成長が経済成長を牽引していく構造に変えることこそ大切」との主張も四半世紀以上かけて進めてきたところですが、最近はこうした私論にしての試論が、あまり不思議でもない発想として聴いて頂ける時代になったのも実にありがたいことです。デザインとは単に形や色づくりではなく、企業や社会の美意識や文化づくりだとは、創業以来述べ実践し続けてきた理念ですが、最近ではそうした構想を理解し具現化できる人材を育てていくことこそ肝要との方向に、もう一歩私自身の意識は強まりつつあります。


再び、記録のPAOS


これは前回の賀状にも書いたことですが、PAOSという存在はともかく異常な記録魔であることには間違いありません。2005年はブリヂストンのCI導入やベネッセが「文化化」なる企業指針を掲げてから25年、INAXの社名ブランド導入から20年と、仕事暦的にも記念すべき年となり、感謝されたりパーティにお招き頂いたりの嬉しい年でした。特に、これらに関わる私共の丹念な記録がお役に立てたことは何よりでした。記録と言えば、二度にわたって展覧会を開いた西新宿35年の定点撮影、つまり何もない野っ原から現在の超高層ビル群に至る淡々たる映像記録が、主要な新聞はもちろんTV・雑誌等々に数え切れないほど取り上げて頂き、信じられないほど数多くの市民生活者の皆さまに感銘をもってご覧頂きました。そして1年も経過してなお、立派な記録本(2月刊)の出版計画が進み、中山弘子新宿区長、白井克彦早稲田大学総長、伊藤滋都市再生戦略チーム座長などの諸先生方とそのための対談の場を持たせて頂きました(写真映像DVDは既に販売中です)。


その他、TDK(1966)に始まるおよそ100社に及ぶプロジェクトの詳細な開発記録類も、今や世界に比類無き貴重なわが国の産業史的実録です。これらはまさにこの国のデザインやブランド戦略、情報価値型事業開発の稀有な記録であり、今もPAOSがいろいろご相談を受けたりご提案できたりすることを可能とするビジネスの根源的教科書です。今後こうした産業文化資産をいかにデジタルアーカイブス化していくかが難題ではあるのですが。


触発のPAOS


PAOSに関わるキーワードをもう一つ挙げるならば、それは独自の理論構築と実践に支えられた講演・教育などの「人育て活動」でしょう。六本木ヒルズアーク都市塾や早稲田大学経営大学院に代表される定例講義や年30回を越える講演等の活動は、私の場合は教え覚えさせる教育ではなく、豊富な実践の成果を元とした刺激触発型教育活動と言えるでしょう。


PAOSの拡デザイン運動は「1.政策・方針 2.表現・表象 3.新事業・事業領域 4.理念・存立 5.社会的・文化的・環境的価値」の5軸の価値創出の啓蒙実践であり続けましたが、近頃はそんな発想を理解するPAOSイズムの若者たちが誕生し新人も迎えており嬉しい限りです。これは広汎なPAOS流デザイン活動の一つの成果でしょう。「理系文系を問わずどの学部の学生でも受講できるデザインの講義を」とのご依頼を受け早稲田大学にて実験的な授業を始めてみることになりましたが、同大学改革の理工学部改変・文化構想学部創設・スーパーCOE(先端科学・健康医療融合研究機構)等これまでの諸プロジェクトと共に挑戦的な試みとなってくれそうです。これらの流れや成果を総括して明言できるのは、「読み書きそろばん、そしてデザイン」が今や分野の垣根を超え現代人の基礎教養になってきたと言って間違いないということです。まさに美意識・文化化意識が市民インフラ・社会基盤の萌芽となる時代へと転換が始まりつつあります。


中西  元男



投稿者 Nakanishi : 2006年01月01日 00:00