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COMMENT

« 《ロゴマーク》とマツダのCI(コーポレート・アイデンティティ)メインアジアのデザイン・アイデンティティ (3) »

デザインの《標準化メリット》追求

2004 / 10 /13

マツダのCIでもう一つ日本型CIの特長となっていった事例を取り上げてみましょう。それはCIプロジェクトの開発過程で徹底してデザインの標準化メリットの探求を採り入れていったことです。


今でこそCIやブランド戦略に投資することを疑問に思う経営者はほとんどいないと思いますが、「製品さえ良ければ放って置いても売れる」と考える人たちの多かった1970年代初頭では、直接的な広告や販促のようなフロー型のデザインに費用をかける意識はあっても、CIのようなストック型のデザインに資金を投資する発想などほとんどありませんでした。

そこで考えたのが、CIを導入すると企業やブランドイメージが良くなるという利点の他に、「経費節減にもなる」というもう一軸のメリット追求も強く押し進めようとしたのです。CIなかんずくVI(ビジュアル・アイデンティティ)を展開するためには、それこそ小は名刺から大はビルディングにいたるまで、ロゴマークの入るあらゆるアイテムが集められ事前に分析されますので、その際に単にロゴマークの入れ方のデザインのみでなく、名刺や帳票といった各アイテムそのものが持っているあらゆる属性(材質、印刷方式、機能、管理方法等々)も合わせ徹底分析していったのです。

その結果、たとえば名刺一枚あたり制作コストは約半額に落ちました。名刺とは100枚単位で印刷して貰ったものをプラスティックの箱に入れて購入するモノという従来の常識を破ったのです。基本的なロゴマーク等印刷部分は予め大きな板紙で刷ってしまい、それを断裁して各人必要枚数ごと指定書をつけ印刷屋さんに出し制作できるシステムに切り替えたのです。

こうした無駄の排除は社員5,000人余の会社では大きなメリットです。ましてや全国のディーラー全てを含めると膨大なコストダウンになることはいうまでもありません。これ以外にも標準化推進の中で最大のコストダウン効果を上げてくれたのは自動車販売店のデザインシステムの標準化でした。これはMSP(マツダ・ショップ・プロジェクト)と呼ばれ、ディーラー店舗一軒あたりの建設コストを30〜35%ダウンさせることに成功させました。

たとえばここで用いた方法の一つは、どうせディーラー店舗の外装には mazda のロゴマークや車種名の入った面版がつくのだから、表装版のうえにロゴなどのチャネル文字を重ねて取り付ける材料の無駄を省き、外装板そのものがサインの面板でもあるという一体化システムを採用したのです。

しかも、店の条件ごとにコンピュータ上でデザイン・レイアウトされた規定のロゴ等、チャネル文字を切り抜きマシンに入れ、建物に合わせた大きさで制作し、現場ごとに搬入を可能となるシステムにしたのです。要はCadCam(コンピュータを用いデザインし、同時に、コンピュータを用いて製作する手法)化したわけですが、おそらくこの時用いられた制作手法がわが国で最初の本格的なCadCamだったのではなかったのでしょうか。

1973年にオイルショックが起き、マツダの切り札であったロータリーエンジン車はガソリンをがぶ飲みすると評判を急激に落とし、たちまち経営不振に陥っていきました。そこに主力銀行である住友銀行や住友信託銀行が入ってコストコントロール部がつくられ、いろいろな部課の改廃や取りかかっていたプロジェクトの多くは廃止に追い込まれました。

ところが、CIプロジェクトをやればコストダウンにつながるとの評価を受け、このプロジェクトは生き残ったのです。企業イメージを上げるという本来の目標への評価ではなくCIプロジェクトを導入すれば「標準化でコストダウンにつながる」とのいわば副業として用意したシステムへの評価で、日本最初の本格的CIは日の目を見ることになって行ったのです。

この成功で、その後のプロジェクトでもCIに標準化メリットを採り入れる推進手法は、PAOS流CIの専売特許のようなノウハウとなっていくことになります。



投稿者 Nakanishi : 2004年10月13日 01:08